ホテル暮らしは快適だけれども、そもそも私は旅館派ではなかったか。急に恥ずかしくなって駅前旅館に移ってきたのだが、恐ろしく日当たりが悪いのかそれとも電灯が壊れているだけなのか。なにやらが玄関で鬱蒼と茂っていた (more…)
高天原を知る者は言わず
道。道とは何か。「道の道とすべきは、常の道に非ず」。温泉の道を志して二十余年。ついに日本最奥の温泉、高天原温泉にたどり着いたのだが、その道の長いこと長いこと (more…)
霧中説霧の良い旅を
古い地図を買い換えに訪れた書店で会計を済ませると、商品と一緒に小さな声が手渡された。「――良い旅を」。厚いメガネの、いかにも書店員風の、恥ずかしそうなその一声に、旅情は始まっていた (more…)
みんな斜めで丁度いい
宿の玄関で荷物を抱えていた私に、ちょうど出てきた入浴客が斜めに傾きながら問いかけてきた。――え、ここ?! ここに泊まるんですか?!
土産を求めて、行きしなに立ち寄ったプリンスホテルは大変な盛況であったが (more…)
独り、起つ
誇張するように貼られたステッカーは同人であることを示し、同じような車両が河川敷を占拠していた。並んで釣り糸を垂れているその姿は、まるで肉焼いて酒飲んでゴミを捨てる集団のようであり、今まさに目の前で (more…)