サフィール、小さきものの夢

サフィール、小さきものの夢

なんだか妙に険しい鎖場、やせ尾根、そして激しいアップダウンが続く縦走路で私は思い返していた。今頃は大相撲九州場所、それから阿蘇に祖母山とくれば、黒川・杖立温泉という西日本屈指の名湯を堪能しているはずだった。阿蘇山の噴火により変更した行き先は、どうして丹沢山塊と天城山縦走、伊豆・伊東温泉。あれ、 (more…)

夏の思ひ出、三十年目の告白

夏の思ひ出、三十年目の告白

風を追いかけるような日々にどんな意味があったのか。夏の日の風は日没を前に先触れなく止んでいた。それを機に、頂の向こうから湧き出した雲が急いで上空へと昇っていく。けれども風が止んだように、そうしてまたどこかへ消えていくのだろう。

「実は、俺——」 (more…)

絵画の世界だとしても

絵画の世界だとしても

待てば海路の日和あり——。近づく台風よりも感染症の状況を見定めて、北アルプスの長い遊行を上高地から決行。徳沢から登山道に入ると賑わいが嘘のように消えたのは、この急斜面のせいだろうか。尾根に取り付いても眺望のない樹林帯が静かに永く繁茂し、深い山域に迷い込んだことを早くも後悔させていた (more…)

真砂の坂道を歩いて

真砂の坂道を歩いて

ごっそり残していたのが南アルプスの山々だった。手始めに、比較的穏やかな山容の鳳凰三山を芦安温泉郷から縦走し、名湯奈良田温泉、そして甲州の西山温泉を目指した。

緩い勾配の峠道はとても静かな緑の中にあって、疲労させるどころか体を軽くさせた (more…)

現成受用、受け入れる

現成受用、受け入れる

奥秩父の連嶺は、その延長と高度から言って、日本アルプスと八ヶ岳連峰を除けば、他に例を見ない大山脈——。甲斐、武蔵、信濃の国に跨がる秩父多摩甲斐国立公園の山岳地を、両神山より雲取山を経て、いよいよ大菩薩の嶺にたどり着くと、晩秋を抱き込んだ富士の峰の、その裾野のすべてを正面に置くことが出来たのだった (more…)