飛散、安宅の関からの

飛散、安宅の関からの

仕事納めのその日まで北陸に滞在、冬の日本海は例年になく穏やかだった。恋の季節を待ちきれず、若者たちが触れ合っていた「安宅の関」で、富樫ばりに詮議してやろうか、それとも弁慶ばりに打ってくれようかと私の胸の裡だけが荒れていたのだが、帰省して年が明けると (more…)

私的寒山拾得その弐

私的寒山拾得その弐

——寒山拾得が二人で描かれていることに、ようやく自分なりの解釈を得るも、私は投函された喪中葉書で旧友の母が亡くなったことを知ってしまった。

寺のかまど番をしていた拾得が寒山にその残飯を (more…)

愁人湯行

愁人湯行

白く枯れた枝先をジン、白骨化したような幹の一部をシャリといい、神仏まで坐す盆栽という鉢植えを覗き込むと、途端に世界は一変して小千世界に——。力強く断崖をつかむ八方根から枝垂れを伸ばし、その常緑の葉で奔流を涼しげに浴びていたような展示品には (more…)