熊野本宮の湯

熊野本宮の湯

熊野三千六百峰の連なる山々がひとたび深い霧の中に包まれると、森は静寂の道を細く長く開き、それが別の入口に続いているかのように思わせた。

多くの自然景が残された紀伊山地で崇拝される神々は樹木や巨岩、滝などにとどまらず、熊野三山の本宮には阿弥陀如来、新宮に薬師如来、那智は千手観音が鎮まるという神仏習合で (more…)

冗談みたいな芸術品

冗談みたいな芸術品

谷川岳の一ノ倉沢がモルゲンロートに染まっていた。アルプスや富士の雄大な峰もさることながら、旅情を滲ませた鉄道もいいねと書店のカレンダーコーナを見て回っていると、おおお!「壇蜜カレンダー2019」の前でしばらく動けなくなった。

鋭い視線にようやく金縛りを解かれると、軽蔑に似た (more…)

アイドルファンに学べ

アイドルファンに学べ

業務には到底関係なさそうな大きなバッグの中に、アイドルのコンサートで使用するような電飾の棒が見えた。私が問う前に「——そう、アイドルです」満面の笑みで答えた担当者。熱心なアイドルファンで業務出張に関わらず、月に何度も遠征するという。「趣味は?」と尋ねられて魚釣りだと返すも「本気ですか?」一瞬、答えを躊躇ってしまった (more…)

裏岩手縦走路を行く

裏岩手縦走路を行く

バスが遅れて飛び乗った新幹線で、息を弾ませながら顔を見合わせた。しかし、車内放送で謎の行き先「シンアオモリ」を告げられると、緩みかけていた顔に緊張が戻った。しまった、はやぶさ号だ——!「こまち号、こまち号は!?」デッキで車内販売のワゴンを準備していた乗務員は慌ててドアから身を乗り出し指さしたが、接続されていた前車両は盛岡の駅で切り離された (more…)

美作三湯をめぐる

美作三湯をめぐる

普通に出された諏訪泉の熱燗が美味いのなんの。純米酒の本場である鳥取の酒は普段から愛飲しているが、まだ知らぬ久米桜を一口含んでみてアハハ、美味い。旨味の輪郭をはっきりとさせる強力などの特産米に始まり、完全発酵の技術により長い熟成に耐えうる強い酒質が醸されて、まろやかな香味と素晴らしいキレを併せ持つ純米酒になるという (more…)