Catch as catch can

Catch as catch can

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柏手を打ってから塵手水を切る。吊り屋根の四隅に赤青白黒の房、四本の柱に神神を迎えた土俵の上で、武器を持っていないことを相手に知らせた裸の男たちが、正正堂堂と勝負を誓う。髷を結った力の士が真剣勝負でぶつかり合う相撲とは、いにしえより伝わる神事のこと。すべての所作に意味を持ち、だからその美しさまでを問われる。
いつの間にかルールすら見えなくなった格闘技は、金網の中で狂気の沙汰を繰り返し、あげく馬乗りになって襲いかかる。ラッキーに当たる鋭い肘や膝が競技に要する技術を無用とし、勝敗の行方は血まみれで倒れている相手に向かい、握ったこぶしを高く挙げた方に決まる。湧き上がる歓声もまた、力は暴力で測れないことを忘れている。
大相撲の立合いは、相手の呼吸に自分の呼吸を合わせて立つ。まずは相手があって、はじめて相撲が取れることに感謝と敬意を表すのだという。
受けて立つ。一瞬の内に高度な技術と日々の鍛錬を問われるその強さには、比類無き美しさを兼ね備えている。