Divided we fall 2

Divided we fall 2

ダイナマイトで発破をかけられて、渓谷は消えた。
空気が震えたというその工事音が、住民に突き刺さったという。
「出てゆけ、お前たち出てゆけ」
まるで脅迫されているようだった。
電車はもう渓谷を省みず、トンネルの中をただ軽快に走り抜ける。
それで私たちは一体何を手に入れたのだろう。
Japan and the Japanese

Japan and the Japanese

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前触れもなく生温い風が石畳の路を吹き抜けた。
一度、軒先の灯籠を揺らしてから舞い戻ってきたそれが首筋を伝って外耳に触れると、不思議なことに、聞こえるように思えば、聞こえてくるような気持ちにさせた。風音に耳を澄ますと、ついさっきまで響いていた外湯に向かう下駄の音はもう遠くに消えている。静かな山里の湯治場はもうすぐ盆を迎えようとしていた。
風土や光景、郷土に残る季節ごとのしきたりなどに感じ入ることがあるとすれば、それは日本の霊性だという。無分別に持つものが感じ取る、日本人としての何か。例えば民話の中に取り残された奇跡や今はもう見ようともされなくなった世界のことが、伝えられることもなくなっておとぎばなしの内に閉じ込められていく。
近代的な遊園地や人工的な保養地で耳を突く大声の中にいれば、自ずと大声になる。それではあまりに疲れるだけでなく、語らずとも聞こえてくるような大切な声を聞き逃してしまうのかもしれない。
Gift with

Gift with

終点へ向かう鉄道はレールのつなぎ目に大きく揺れる。時折、ピィっと悲鳴のような短い警笛を鳴らして、誰もいない路を塞いだ踏切の中を駆けて行く。
すっかり慣れた顔で都会の景色を過ごしていたのだろうけど、鈍くてとても重たい冬の一色にはやっぱり目が離せなくなるでしょう。はしゃぐような、嬉しくなるようなそれとはまるで違う、描きようのない現実だからね。
手のひらで拭っても、結露の先にも続くどこまでも同じ景色にしばらくうんざりともしていたが、いよいよあきらめに変わったのだろうか。少しだけ穏やかになって見えた。
車窓に映り込んだ顔が踏切の赤に染まる。もうしっかりと前を向いている。どうして雪国の女が強いことを思い出すと、短く鳴った警笛に背筋が伸びた。