奥鬼怒温泉の野犬

奥鬼怒温泉の野犬

奥鬼怒温泉へと続く渓流沿いの遊歩道は、いきなり勾配を急にして、本格的な登山道を期待させるも、すぐに平坦な道へと戻る。初夏の渓の爽やかな風が森を抜けていったが、太公望たちが垂らした釣り糸に、強く後ろ髪を引かれていた。釣り竿は持たずに、手拭いとおにぎりを持ってきた自らを (more…)

北陸の古湯

北陸の古湯

久しぶりの北陸出張。新幹線開業より随分と経つが、今も金沢市内は国内外の観光客で賑わい、百万石の加賀は健在だった。富山市内も駅前の再開発が進んでいたが、何より立山連峰の姿はいつ見ても雄大で、黒部の水を集めて一気に日本海へと下る流れに心は奪われる。そして、日本の温泉史の中でも極めて重要である (more…)

丸子の領収証

丸子の領収証

秋田沖で使えなくなるという謎の症状を改善すべく、乗り込んだ船の操舵室。案外小さい舵は模擬運転やゲームセンターのようだったが、港を見下ろす迫力はさすがの一言に尽きた。出港までの短い滞在を、屈強な航海士たちが忙しなく動き回っている。その中で気圧されていると、急に喉が痛みだした。鼻はぐずり、一気に集中力が削がれていく (more…)

八甲田の主峰

八甲田の主峰

先週までシカゴへ出張していたという旧友に、「遠いね!」と言われた青森出張——

夏の休暇を二つ使い、青森の温泉を集中して巡ったことがあった。井上靖の小説「海峡」の終幕の舞台である下風呂温泉は、すぐ先に津軽海峡を臨む小さな漁師町。訪れた日の海は残念ながら雨に打たれていたが、晴れた夏の夜には下風呂沖だけでなく、北海に灯された漁火までもが (more…)

伊豆の踊り子号

伊豆の踊り子号

185系の特急「踊り子」号が終点の駅で、次の出発までの間、老体を休めていた。いよいよ引退を迎えるその姿には、隔世の感があった。子供心にカッコ悪いなぁと思い続けてきた車両も、今や最後の国鉄型車両だという。私も齢を重ね、ようやく古ぼけた緑のストライプに感じ入ることができたのだが、ジーザス。何も考えずに、三島まで (more…)