在来線信濃路紀行

渋温泉は有形文化財の宿、金具屋の予約が取れて、いざ信州へ。寒波は中休みとなり、鉄道も運休になることなく、むしろ絶好の雪景色となった林檎畑の中を走る長野電鉄からは、北信五岳の素晴らしい眺望が。あまりにもきれいで、見事に写真を撮り忘れた。終点の駅に迎えに来ていた運転手の饒舌も見事だったが、なるほどこの方が宿の八代目。

そんな八代目による館内の文化財巡りは宿の名物であるが、源泉見学ツアーなる温泉ファン垂涎の催しも早朝より開催されるというのだから、八代目のおしゃべり好きは本物だ。

こちらもちょっとやそっとの温泉ファンではないのだが、浴衣に下駄履き厳禁なのはともかく「汚れてもいい服装」とのことで、一体どこまで潜らせるというのか。厳冬期に、しかも野外で、なんと七十分も、八代目にしゃべり倒されるとあっては敵わない。

ちょっと張り切って、一張羅のカシミアを着てきたことを言い訳にして、今回は遠慮することにしよう。

 

信濃路をスマホに尋ねると新幹線が回答されるからなのか、在来線特急のしらゆき号は低迷する。沿線の市町村による乗車キャンペーンの広告が駅の柱に寂しく貼られていたが、こんなの誰が応募するのだろうかと奮って応募してみたところ、後日談だが大当たり。

一房ではなく一本千円もする、謎のバナナが贈られてきたからではないが、旅は在来線で行けば楽しいのに。上沼垂色も路線の景観によく映えるのに。

宗派に属さない善光寺だが、天台宗の貫主と浄土宗の上人とが本尊を守っており、上人は代々尼僧に継承されてきた。そんな上人による、お数珠頂戴、はとても優しいとのことだが、貫主のときは結構痛いらしい。

門前町の外れで、婆さんが一人で営んでいる食堂に入った。どこからきたのかどこへいくのかと会話を弾ませれば、長い長い飯山線の、深い深い雪景色の車窓にも旅情となって映し出される。丁度、雪祭りの開催日だったらしく、汽笛の後に花火まで打ち上げられた。