壮者の含羞

典型的な日本人体型というのは揺るぎなく、かつ壮年の体重増も貫禄であると開き直れば、短足もまた由緒正しきそれである。にもかかわらず、今年から丈の短いモデルの販売は無しというのだ。替わりに裾が窄まったズボンがずらりと並べられていた。これがその、流行のジョガーパンツですと店員が胸を張ったのを見て、その昔、学生プロレスに「ビガーモリタパンツ」という選手がいたことを、私は漠然と思い起こしていた。比類なき、名選手であった。

高原を訪れたときもそうである。赤毛のアンを模した商品があるとのことで、いかにも高原的なカップルや夫妻などに隠れるようにして、くまなく店内を物色。アンの腹心の友を勝手に名乗ること三十余年、Tシャツにバッグにマグカップにと、心の平衡を今にも失ってしまいそうな物ばかりであったが、この恥ずかしさは何ならむ。娘への土産ですという顔を繕うも、だからTシャツが貫禄のサイズ。

「この小父さん、まさか――」いかにも高原的な女性店員は思うだろうか。会計の恥、いや会稽の恥を雪ぐためにも、壮年の私は突っぱねる他なかったのだ。

――そんなの穿けるか!

すでに風薫る、遅すぎた花見に集いし壮者たちのズボンの裾が、なんと私を除く全員の裾が、見事に窄まっていたのを眼前にして薫染を被った。生麦酒の注文を禁止する、美酒と佳肴が邂逅する会合では今後、一切のジョガーパンツを禁制とすべからく。(ビガーの方は不問に付す)

『輝けニッポンの恥!学生プロレス』有志によるデジタルリマスターを切望するばかりである。