俗っぽい、従兄がいて。子どもが三人、上総のニュータウンに居を構える。夏はサーフィン冬スノボ、最近はクラブなんかも握っているらしい。そういう無趣味の人だから、キャンプブームの時に一式揃えた。テントにシュラフ、キャンプチェアにテーブルに、それからランタンでしょストーブでしょ。グリルやオーブンにスモーカーまで揃えたけれども、タープが立てられない――。
キャンプ料理が進まないどころか、一向にキャンプが始まらないのを、家族はミニバンの中から冷笑していたと聞いて失笑したのだが、人気のキャンプ場で大きなシェルターの中にぽつねんと座る私――焚き火に吊した鍋はレトルトのおでん、酒は頂き物の剣菱、グリルの中で実は林檎を焼いている――に、果たしてその資格があったろうか。
乱舞していた蜻蛉が、何処かへ飛び去っていた。ガスとオイルのランタンに灯りを灯す。が、久しぶりに取り替えたマントルは歪な形に焼き上がってしまい、オイルの方はすぐに芯が尽きた。結局ヘッドライトを灯して読み進めた『AI時代に学ぶ禅 本来の自己を生きるために』のテキストだったが、本来の自己にたどり着く前にブヨに噛まれ、気付けば顔面から流血していたから既に遅し。
それでも、賑やかなのを羨ましいなんて思わないと嘯いた翌朝。無惨な顔でキャンプ場をチェックアウトするとき、憐れまれたか、それとも俗っぽくみられたかと、己事究明には程遠い。