これ以上情報に振り回されないよう、少し前にSNSのアカウントを削除したのだが、遊漁券の販売所を調べようとインターネットに接続した途端、「え、ウソ、こんなのがじゃんじゃん釣れるの?」怒濤の如く溢れてきた虹鱒の放流情報に振り回された。
釣りびと憧れの南部の河川で、ノーバイトノーフィッシュ。しかもそれが甘い話に釣られてだというのだから、目も当てられない。そんな日も、白色の中に薄ら翠が混じる松川温泉の極上硫黄泉は、優しく私を包み込んだ。
同じ轍を踏むことのないように、翌日は細心の注意を払って、別河川の遊漁券の販売所を検索。すると画面には、見事な鼻曲がりの山女魚の姿が。「え、ウソ、こんなのがじゃんじゃん釣れるの?」本流から遡ってくるという釣果情報に、またも振り回された。
連日のノーバイトノーフィッシュ。それも助平根性を丸出しなのだから、何とも恥ずかしい。さすがにこの日は、ほのかに香る滝ノ上温泉の高温泉にも烈しく叱責された。
改装中だった石川啄木記念館が開館していたので、消沈のまま立ち寄った。自身の結婚式をもすっぽかす啄木だから、家族は烈しく振り回された。家族を置き去りにして行くこと数回、ついに奥さんの堪忍袋の緒が切れると、啄木は大変驚き、そして傷付いたという。
原発大反対だが、温泉ファンとして、地熱発電にも諸手を挙げてという訳にはいかない。一昔前、日本の電力はすべて地熱発電で賄えるなどとして、巨大企業の事業参入を読んだか聞いたかしたのだが、一瞬にしてその話が立ち消えたことも、うろ覚えだが覚えている。
なぜだか、本当のことは出回らない。だから振り回されてはいけない。啄木を鑑みて、予想以上に傷付いている、自分の馬鹿さ加減にも気付かなくてはならない。