招かれた宴席で並べられた膳の中には鶏肉が入っていた。それを見て良寛禅師、ほくそ笑む。「今宵は御馳走ぢや!」しかし、すぐさま間違いに気付かれて精進膳に変えられた、その絶望たるや。
がんかもは我を見捨て去りにけり とうふに羽子のなきがうれしき
ふぐ料理、はもう一段寒くなった方がということで題、焼き鳥の下に集ったのだが、満席の店内は若い客層に詰められていた。人気の店だとは露も知らずに予約を取った主催者を責める声、それを掻き消そうとおすすめを人数分注文するも、まるで機先を制するように返された丁稚の発言に会員たちも戦慄いた。
おすすめできる部位の、在庫がありません――
「お、終わってんな」
思わず漏れ出た嘆息に即応したのは、丁稚ではなかった。
「終わってねえし、つか始まってもねえし」
不惑を経て、いよいよ知命へ向かうも、未だ立ち上がってもいないとは何ならむ。結婚、出産、管理職と、切られたステップを上がる度に塗られていくのが幸せだ。
「そんな駄作、見たくもねえし・・・・・・」
来し方はファミコン、合コン、行く末に終わコン。傍から見れば笑い種、なぜなら人の不幸は鴨の味。あ、鴨鍋もいいかもね。
酒の品書きに京の玉川があった。野太いその味わいは、熱燗にして良くキレる。酒質を見極めることが肝要、分かる? 肝ってことだよ。
「あ、俺、レバーね」
焼き場から丁稚が戻ってきた。在庫がありません――
「・・・・・・ぢや、皮」「ありません!」