Japan and the Japanese

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生温い風が石畳の路を吹き抜けた。
軒先の灯籠を揺らしてから舞い戻ってきた風が首筋を伝って外耳に触れると、不思議なことに、聞こえるように思えば、聞こえてくるような気持ちにさせた。
ついさっきまで響いていた外湯に向かう下駄の音は消えている。静かな山里の湯治場はもうすぐ盆を迎えようとしていた。
大声の中にいれば、自ずと大声になる。それではあまりに疲れるだけでなく、語らずとも聞こえてくるような大切な声を聞き逃してしまうのかもしれない。