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アンチシステム! 絶叫していたハードコアパンクバンドが、ライブハウスの暗い階段を上がって来るや否や、「もしもしーお疲れさまですー」最新式の携帯電話のアンテナを伸ばして通話し始めた。
玉造温泉の観光旅館で夜ごと披露される安来節は、唄い継がれてきた民の謡いではなく、余興に堕している。それでも、ザクザクザクと振られた銭太鼓は意外に危うい音色で、烈しく弾かれた三味が鋭く、鼓の高音が天井まで突き抜けると、歌い手は唸りをあげた。
突如として、観光旅館の柱が十字架を浮かび上がらせ、照射されたライトの影で不気味にはためいた。すると、どこからともなく、頬っ被りのどぜう掬いが現れたではないか。
これだ! これが、アンチシステムだ!