Over the great ridge

「あんまり山が物凄いので」と、詩人は物語の中に著した。
一面を盲目の純世界に仕立てていた雲の中から、音もなく顕れた山の稜線に息を呑まされた。
とこしえに続く緑の上にあふれ出した刹那の赤が、洪水を引き起こして胸の内に迫り来る。
なんとか絞り出したその言葉だったが、感動というよりはむしろ畏れに近かった。