覚悟、そして人生

警官の息子だったら、彼はきっと警官になっていただろう。ただ、因縁がそうさせただけであり、その道で生きていくしかない人間もいる。だからきっと、蛇にも蛇の道がある。私はずっとそう思っていた。背負わされた自分と本来の自分は違うのだと彼はよく口に出したが、それでも定めは変えられないのだと、どこかで私はそう思い続けていたのかもしれない。

尾ひれがついて錯綜した行方を知る由もなかった。その道を全うするための務めなのか、はたまた身を隠さなければならない状況にあるのか。落ちて入ったのだとすれば、這い上がり抜け出せるが、生まれてこの方、その世界で生きてきた。容易ではない環境の中で、体はもとより心はどうなるのか。家族を裏切らなければならないこともあるのだろうか。どんな覚悟が必要だったのか、それは聞いたことがなかった。

(電話も繋がらないと聞いていたので)同じ電話番号での着信に驚いた。逃げていないよと電話の向こうから、明るく笑う声が嬉しかった。

——子供の頃から家系にコンプレックスを抱いてきたが、周りは理解するどころか、どうせあれだこれだと決めつけた。私とて、少しは同じように思っていたから、変われないと踏んでいたのではないか。だから周りの悪評に同調することが、彼の唯一の反発方法だったのかもしれない。ならば、なりきる。なりきってその道を進めども、本来のとても真っ直ぐな自分が許さなかったのだろう。

しっかり足を洗った。もちろん、家族も一緒だ。新しい土地で家族と一緒に、一から新しい生活を始めていると話す声が一段と明るかった。

人はいつでも変われるのだ。良い方に、良い方に変われる!どんな因縁もしがらみも、そして定めまでも、自らの力で克服することができると、見事に旧友が証明してくれたではないか。おおお!すごい、ついにやりやがった!

今は年下にこき使われて大変だと、互いに鼻水を啜りながら妙な笑い声。たくさん悪いこともしたからね、報いだなきっと。また一段と妙になった声は、もはや笑っているのか何なのか。

コロナが落ち着いたらだけど、今後は堂々みんなと会える——、堂々と会えないのは、私の方ではないか。なんの覚悟もできずに、変わることができない自分が情けなかった。覚悟、そして人生。それを見せられて、おまえは悔しくないのか。

ほんとうにおまえは、悔しくないのか。

常にレッテルが貼られた人生を生きてきました。偽物の仲間のために生きる、そんな生き方にも嫌気がさし、土地を出ました。誰も知らないところで、誰の助けも借りずに、自分の力だけで家族を守り、養っていく覚悟ができました。

今は家族五人仲良く、今までの人生で一番平穏で、楽しく暮らしております。第二の人生の出発は遅れたけれど、家族のことだけを考えて生きる人生、幸せです。

電話で話せて、嬉しかった。会えていなくても、仲間なんだと再認識しました。長々、すみません——。