遙かなる酔っ払いたちの鈍走(メモより)

盛岡で新幹線下車。IGRいわて銀河鉄道八戸行に乗換え、滝沢駅到着。いにしえからの信仰登山道、柳沢の馬返し登山口より登山開始。荷物、とても重たい。

宮沢賢治ら「馬鹿旅行」と称し、道中にて俳句短歌詠む。朝焼け燃える山頂で銀河への誓い。私たちとて、未だ退屈を知らず。懐深い岩手山抜け、滝ノ上温泉経由で乳頭温泉郷目指す。馬鹿旅行。

「遙かなる酔っ払いたちの鈍走」勇んで題す。が、その意味さっぱり分からず。

 

銀河、来光に溶け出す。雲上に居たこと教える。青く陰ろう夜明けの眼差し。振り返る山頂、まったくの赤富士。眼下に緑一色の八幡平。その湯煙、遠く津軽富士まで立ち上る。辟易するほど長かった裏岩手縦走路、二年前の馬鹿旅行。思い出し一時荷物、軽く感じる。

ナイトハイクで登ってきた青年、三脚立て山頂でシャッター切る。ナルシストっぽく連写。斜面にまだコマクサ残る。何撮る尋ねるも青年、なぜか顔にミートソース飛散。自分でもよく分からないとのこと。

どうして今ここに、己事究明すも答え出ず。よく分からない、よしんば過ちではないかも。青年、顔まだミートソース散る。酒呑みきた延長に岩手山、それだけは疑いない事実。

 

悩んだ挙げ句、地酒見逃し。南部にも純米蔵あれど、価格高めで香りは強めNG。旧友の山飯、やっぱり郷土料理シリーズ。謎の汁MAMEBU、しょっぱくて甘い不思議な味。とても楽しい。インスタントやフリーズドライ、ミートソース御免。楽しすぎて鍋、ひっくり返る惨事あり。馬鹿旅行。旅の山、風に吹かれて酒と飯。語らいありて、人生は素晴らしい。

瑞相、いつの間にか消え去り鬼ヶ城。山々飲み込まれ、滝雲が這う。目指す秋田の山は遙か遠く。深い森の急な下り道、眺望なく陰気で暗い道。長い。無音の霧雨冷たく袖濡らす。会話少なく、荷物また重く。長い。それでもウグイスの幼鳥、鳴き声愛らしい。

霧の中お花畑に出る。まるで人形コバイケイソウ。揺れる白い穂先が手を振る様に。川を徒渉し大地獄。荒涼、硫化水素たちこめる。変わらず曇天、霧雨冷たく。稜線に出て強風。帽子飛ぶが旧友、見事キャッチ。黒倉山、姥倉山、犬倉山、大松倉山、経てようやく三ツ石山荘。立派な避難小屋。煙る湿原は楽園にしか見えず。ニッコウキスゲの黄色、きっと天国模様。三ツ石山、姿見えず残念。

 

同宿は沢登り若い女性グループ、山岳会中年男性ら。密集なし、安堵する。男の一人、カバ似。眼鏡の女、声高に山の魅力語り始める。はまると怖いは間違いなく女の方。眼、見合わせて頷く。カバ、つられて頷く。

山中にてウーバーイーツ、届かないと旧友。避難小屋で山芋すり下ろす。晩の郷土料理は謎の汁NOPPE。荷物重たい理由これ。とても楽しい。酒、底つくと夜半に激しい雷雨。停電しそうだが、電気なし。ヘッドライト点灯、たまらず地図エスケープ。なぞるもカバ、構わずいびき大。

滝ノ上温泉までの登山道、ぬかるみ多いが雨上がる。時折日差しあり。雲の切れ目に乳頭山、秋田駒ヶ岳。初めて見えるもまだ遠い。土砂降り続く気分。いよいよ乳頭山の登り始まる。遠い。白沼以降に難所、マムシ坂。崩落に荒れた道、登山者他になし。朽ちた木道で尻餅、強打。気温、一気に高くなると水底つき息乾く。残雪あり、泥混じる雪解け水に生き返る。雲消え、ついに乳頭山。烏帽子の全貌はっきり現れる。

 

山塊またぎ県境を越える。振り返る道、雲に隠れて岩手山また知らず。山頂で夫妻と意気投合。同郷まさかのクニモン、奥方若くてイイ女。第二の人生口説くも、まんざらでもなさそう。どの山から来た、急に旦那がはぐらかす。

「マウント岩手」遠く指さし答える。その姿ちょっと誇らしげ。笑顔の奥方やっぱり若く、第二の人生もう一度。

遙かなる酔っ払いたちの鈍走。乳頭温泉郷に無事下山。山中の野湯、一本松温泉跡にて馬鹿旅行。荷物、もう軽いが、銀河への誓い。忘れたことに今気づく。