夏の地方巡業花相撲

開場前の列で後ろに並んだのは、着物姿の淑女たち。どうせ、お目当てはイケメンの関取だろうと会話に聞き耳を立てれば、やれ呼出がどうの行司がどうのとマニアック!開場後は力士たちの握手会に並ぶではなく、呼出や行司と記念撮影。まったく、大した大相撲ファンだと感心した。確かに、何ごとにも熱くなれないやつはつまらない

帯同している関取衆も少なければ、客席でも閑古鳥が鳴いていた地方巡業だったが、久しぶりの花相撲を望遠レンズ越しにニヤけている私とて、きっと大したアレである。

ぶつかります塚原に胸を出します大関栃ノ心。正代は多分、横綱鶴竜に朝の挨拶をしている

お目当ての一つである、次世代を担う若い力。帯同していた春日野部屋の塚原は、関取衆らと比べても、ますます見劣りしない体躯で栃ノ心の胸を借りる。目の前で春日野親方が稽古を見ていることもあってか、力一杯、激しくぶつかって行く。地方巡業で遊ぶか否か、栃ノ心はそれで大関まで上がったのだから、今日を大切にすればきっと明日の大銀杏が見えてくるはずだ。がんばれ。

先場所は低い姿勢で果敢に攻める相撲が光った、立浪部屋の明生。しかし、勝ち星につながらず、観ている者さえ歯がゆかったが、地力は確実についてきている若手最有力のひとり。先場所の取組後に花道の奥で、伊勢ヶ濱親方が助言する場面が中継に映っていたが、一門の垣根を越えて伊勢ヶ濱部屋の地獄の合宿(これがほんとうに地獄らしい)に参加している、その姿勢に期待が膨らむ。ただし、この日の朝稽古は土俵下で調整中。これもまた、少し休みなさいと横綱鶴竜の助言があったとか。

炎鵬に何かを伝授している御嶽海だが、よからぬことを企んでいそうな半笑いを浮かべている。玉鷲が因縁をつけているのは栃煌山か

ふと目をやれば、若い相撲女子たちに囲まれて、撮影に応じている若手の呼出たち。(相撲女子には呼出が流行っているのか?)やっかんでいるうちに稽古が終わり、幕下の取組が始まると巡業らしい催しが続く。

阿武咲をモデルに髷結いの実演、若い衆による相撲甚句と初切が披露される。甚句は妙に遅い調子で盛り上がりに欠けたが、軽妙な櫓太鼓の打ち分けが会場を賑やかす。相撲が終わったときに呼出によって打たれる、はね太鼓。これほどまでに情景が見えるドラムスは他にあるまいと聞き惚れれば、確かに、裁着袴に扇子を差した呼出もまた熱い存在なのかもしれない。やるな、相撲女子——。

引退し年寄安治川を襲名した安美錦。いぶし銀、ベテランの妙味、粋な相撲巧者に惜しみない賛辞が贈られた