第二の始まり

国技館の木戸口で再会を喜び合ったのは相撲ファンの友人、というかバンドのメンバーだった。変わらぬ姿に嬉しくなり、友情とはやはり不変であると改め、そして一緒に相撲を観られることを喜び合った(スタジオで会いなさいよ)。皆、子育て真っ最中につき、妙な誘い辛さを抱いていたけれど、たまに誘い出してもバチは当たらないのでは——。ちゃんこ、行こうよと(スタジオに誘いなさいよ)

週末を襲った大型の台風と、またも貴の付く嫌な風が吹き荒れようとしていたが、大きな影響を受けることなく、横綱日馬富士の断髪式は盛大に執り行われた。

鶴竜、白鵬を従えて横綱日馬富士、最後の土俵入りであります

目を見開いて頭からぶつかる激しい立合は鋭く、そして矢のように速い。小柄な体でも真っ向勝負を信条とした相撲で、多くのファンを魅了してきた日馬富士。「日本の」横綱としての意識がとても高く、真摯な姿勢で慈善活動にも熱心に取り組んできた。土俵を降りれば子煩悩な父親の顔を見せる第七十代の横綱は、人物であると関係者が口を揃えて称していた。

満身創痍ながらも、自身の目標であった十回目の幕内最高優勝まであと一つと迫った、昨年末の十一月場所。ひどく稚拙な「日本の」ワイドショーらに取り沙汰されて、世間を騒がせた責任を取り引退を表明した。

あまりに不本意で悲しい最後に思われたが、それでも一切の涙は見せず、引退はまた第二の人生の始まりだから「泣くわけにはいかない」。横綱日馬富士の気持ちの強さを本当によく表した言葉だった。

 

理論派の伊勢ヶ濱親方が育てた最高の横綱にして、最愛の弟子。騒動がどれだけ大きくなってしまっても、断髪式だけは絶対に国技館で——と、引退会見での親方の涙はそんな風に見て取れた。「人のために尽くす人間となれ」亡き実父の教えとともに、師からの教えが今後も大きな指針となっていくことだろう。

髷を落として、いよいよ土俵を去る。神様に借りた力を土俵に返すという。土俵に口づけをして別れを告げた。さぁ、次だ!ポンと一つ手を合わせてから上げた顔が、とても晴れやかだった。胸に込み上げてきたが、私も泣かない、泣くわけにはいかない。新たな始まりを笑顔で祝った。

 

本当にいい引退相撲だったねと友人と語り、再会を誓ってから木戸口で別れた。

「次は初場所で!」(だからスタジオに——)

涙は一切見せない。その男らしさにまた憧れた。ありがとう日馬富士!