ロードスターへ

整理をしていたら懐かしいカレンダーが出てきた。80年代をまだ引きずる1990年は1月から黄色い車が飛ばす——。

あの頃に夢中で読んだCALマガジン。「この車に乗れないなら、俺は電車に乗る」KMCのクォーザーを履いたソリッドカラーのピックアップに添えられていた言葉に、今も心は奪われたままだった。欧州車のポンコツっぷりに驚嘆しながらも、自身のルーツをもう一度はっきりとさせる。パンクはノットドレッド、俺たちはレゲェじゃねぇというように、ラッパーではない私たちはローライダーじゃない。SO CAL LOOK。結局は黄色いVWにドキドキするかしないかだ。

テスタロッサフェンダーにMOMOスター。そして屋根を切り落とせば、北米のTOYOTAはフェラーリを凌駕する

R170のメルセデスがどうしてなぜかあまりに気になって、オフィシャルの解説書を取り寄せた。電動ハードトップのバリオルーフを開ければ、その車は25秒で完全なるクーペから完全なるロードスターに一変するという。メローなイエローと題されたロードスターが東の街並みに溶け込むその姿は、まさにMellow yellow。モデルは国内販売のないSLK200で、並行輸入車を探すも一台も見つからず、正規販売車でも黄色の左ハンドルはとくに希少だと知ることになった。

「R170?107じゃなくて?」

話をすれば鼻で笑われたが、揶揄した顔に先の項を見せるとやっぱり顎が外れそうになっていた。そうなんだよ、SLは買えないがSLKなら買える。右なら黄色も出る?いや、右なんて要らない。酒好きのことを左党というように、左には意味がある。それから赤いレザーの内装がセクシーだろう♪

NYを闊歩する黄色いジャーマンカー。どうしてこんなに胸は躍るのか

こそこそと会社を出る支度をしていると呼び止められた。

「どこいくんすか?」

ちょっと北関東にね。運命を確かめに。

「?鉄道っすか?」

あ、うん。SL、K——。多分、真岡鐵道の仕事に行ったのだと思われた。

仕事を放り投げて飛んできて、今まさにカメラを持つ手が震えている。たとえば家族のためにミニバンに乗る、そういう生き方がどうしてもできない。燃費を気にしたことがない。好きだからしょうがない。キャンプ道具はどうやって運ぶの?今はもうザックに入る道具で十分に遊べる。釣り竿は?屋根を開ければいいんだよ。この車に乗れないなら、やっぱり俺も電車に乗る——

いよいよロードスターへ。病は一向に治らない。

探していた前期型にしてAMG、風。生憎の雨にてプーオンにはできなかったが、ブリリアントなカラーにも胸は高鳴った