みちのくの混浴

やっぱりいい湯だと、黒湯温泉でいつになく浮かれ気味。鼻歌交じりで茅葺きの自炊棟を曲がると、おおお!すごいカワイイ子が!思わず二度見して、三度見で見抜いた。これは堅気じゃないなと。おおお!しかも、混浴風呂の方へと向かって行くではないか——

ありふれた構図の鶴の湯温泉。でもこれが一番しっくりくる構図なのかもしれない

風が森を抜けようとするその前に、ブナの木々は騒がしくなる。「風が来るぞ」「風が来るぞ」と木々の話声の後から風は抜けていく。ブナの森に囲まれた、夏の乳頭温泉郷も爽やかだった。十年ぶりの再訪だったが、変わらぬ佇まいと絶えず湧きだしていた名湯に、もう一度ため息が漏れた。

乳頭温泉郷は初めて訪れたときの印象がとても大きい。真冬で、信じられないほどに雪が積もっていて、それに負けじと、もうもうと湯煙を上げていた露天風呂の光景が、今も深く心に焼き付いている。色、香、湯花と、湯のレベルも桁違いで、茅葺きの宿舎などはまさに東北の湯治場然とした趣にあふれていた。もちろん、当時も人気の温泉郷ではあったが、これが日本の温泉かと感激したものだった。

湯の澄み具合で天気を占うことができる孫六温泉。明日の秋田地方は日本晴れです

温泉郷の中でも秘湯の雰囲気をそのまま今に残す孫六温泉。朝の散歩がてらに訪ねるも、少し時間が早かった。しかし、そこはみちのくの人情宿。いいよ、入っていきなよと招かれて、名物風呂である混浴石の湯で明日の天気を占った。湯が澄んでいれば、明日は晴れ。濁っていれば雨。この天気占いは登山客に重宝されているという。

点在する温泉の自然湧出場所に湯小屋が建てられた。だから、敷地の中で点在する湯小屋の風景というのが、湯治場の雰囲気を醸し出している。そして、混浴の文化。東北の混浴はとても大らかで、性別などという小さな枠を越えた、人間同士の付き合い方。恥じらいよりも和気あいあい、ケチなスケベでは東北で暮らせないということだろう。

そうそう、うたせ湯も忘れてはならない東北の温泉名物の一つ。うたせ湯に行こうと湯から体を上げると、女性客の姿が脱衣所に現れた——。慌てて逃げ出した言い訳は、今日のこの澄んだ湯としたい。やっぱり混浴は苦手。。

「つげ義春の温泉」にも撮影されている自炊棟。まさかカワイイ子ちゃんがここに宿泊していたらと妄想