お湯の誤り

お湯の誤り

未だ雪渓が残る緊張のトラバース。急斜面を横断する路ですれ違った初老の男性が背負っていたのは、バックパックではなくナップサックで(いや、あれは巾着袋か)、片手にはウォルターウェストンから貰ったような木製のピッケルを携えていた。おおお!あの方は、漁労長ではないか——! (more…)

奥鬼怒温泉の野犬

奥鬼怒温泉の野犬

奥鬼怒温泉へと続く渓流沿いの遊歩道は、いきなり勾配を急にして、本格的な登山道を期待させるも、すぐに平坦な道へと戻る。初夏の渓の爽やかな風が森を抜けていったが、太公望たちが垂らした釣り糸に、強く後ろ髪を引かれていた。釣り竿は持たずに、手拭いとおにぎりを持ってきた自らを (more…)

散財の人相学

散財の人相学

人相学に明るいという人に、その黒子は文章力に関わるものだと言われた。ホントかよと言いつつも、若干浮かれ気味でこっそりネット検索。「左 眉尻 ホクロ」と打ち込むと、出てきたのは

「散財の恐れあり」 (more…)

北陸の古湯

北陸の古湯

久しぶりの北陸出張。新幹線開業より随分と経つが、今も金沢市内は国内外の観光客で賑わい、百万石の加賀は健在だった。富山市内も駅前の再開発が進んでいたが、何より立山連峰の姿はいつ見ても雄大で、黒部の水を集めて一気に日本海へと下る流れに心は奪われる。そして、日本の温泉史の中でも極めて重要である (more…)

$89

$89

渓谷のキャンプ場で父子の隣りにテントを張った。父子のテントは真新しく、炭を熾す父親の手つきもおぼつかない。連休を理由にして、息子をキャンプに誘い出したのだろう。何かにつけて、父親は息子に話しかけていたが、息子は左手にスマホを持ち、右手でそれを夢中に動かしていた。だが、返答は (more…)