坂の上の湯煙

坂の上の湯煙

坂の上の雲が、それでもまだ頂きを隠すように覆っていた。

急坂を一気に駆け上がりアルプスの稜線に立つと、森林限界を越えた別世界がさらに強く鋭く、切り立ったままの荒涼で息を呑ませた。そして雲は燻らした煙のように白馬の山頂を漂い、高所の絶景は感動のそれより身震いを誘った。畏れるようにと (more…)

信仰の山、嘘と告白の自炊宿

信仰の山、嘘と告白の自炊宿

約束の時間になっても友は来ず、連絡もない——。

北アルプス登山に向けてのトレーニングで、今回は出羽三山、信仰の山である月山を選んだ。肘折温泉から登り、途中の避難小屋で一泊。翌日に山頂で参拝を済ませて、麓の月山志津温泉に降りるという長い道程。当日は未明の出発を強いられていた (more…)

お湯の誤り

お湯の誤り

未だ雪渓が残る緊張のトラバース。急斜面を横断する路ですれ違った初老の男性が背負っていたのは、バックパックではなくナップサックで(いや、あれは巾着袋か)、片手にはウォルターウェストンから貰ったような木製のピッケルを携えていた。おおお!あの方は、漁労長ではないか——! (more…)

真冬のテント泊

真冬のテント泊

俺の寝袋はマイナス何度までイケる—— ヤマノ主任の道具自慢、そして意地の張り合いが事の発端だった。

冬にも対応する4シーズン用など持っているわけもなく、夏用テントの中で「寒くないんでしょ?」と嫌みを言ってやるつもりで出掛けたのだが、自らも同じように寒さに苦しめられることを完全に忘れていた(ちなみに私の寝袋はマイナス2℃がリミットだった・・・)。

信州安曇野の山麓は積雪こそ少ないが (more…)

縦走泉 苗場山

縦走泉 苗場山

歩いてしか行けない温泉というのはそのほとんどが無積雪期という季節の条件を伴うので(夏は魚釣りで忙しい)、長年の課題となっていました。危険を伴う山域もあるので、なるべく避けたいのが単独行。登山を趣味としていたヤマノ主任をこの山行にうまく誘い出せたのは、目的を百名山や二百名山などの名峰登頂に (more…)