善壱、観音菩薩説

善壱、観音菩薩説

煙草を吸わない者ばかりが集まっていたため、一服する間をまったく考慮していなかった。河岸を変えるために歩いていた街角で喫煙所を見つけるや「少しだけ!」と急いて、善壱という男は煙草に火を点けた。と思ったら紫煙を一口だけ吸い込んで (more…)

酒に十の徳有り

酒に十の徳有り

かつて灘で造られた酒を「下り酒」と称したように、上方より入った上質の物は「下り物」、粗悪な品質の江戸の物を「下らない物」。それを語源に「くだらない」が生まれたとも、酒店のコラムにあった (more…)

そこに生きざるを得ぬ定め

そこに生きざるを得ぬ定め

子方がシテを務める狂言「重喜」。公演後に、実は子方が四十度近く発熱していたという舞台裏が主催側からポロリ出て。それでも演じきった役者たちに「よくやった!」の前に、隣りの隣りの席の不機嫌な老人が「けしからん!」と物言いを付けた (more…)

それぞれのチョロQ

それぞれのチョロQ

休暇中に母を連れて盛岡へ行ったのだが、列車が到着するやピューっとホームを駆け出して行った。東北新幹線から切り離されていた秋田新幹線の車掌に母が話しかけているのが見えた。見えたと思った途端、またピューっと戻ってきた。「かっこいいねー、言うてやんだ」 (more…)

飛散、安宅の関からの

飛散、安宅の関からの

仕事納めのその日まで北陸に滞在、冬の日本海は例年になく穏やかだった。恋の季節を待ちきれず、若者たちが触れ合っていた「安宅の関」で、富樫ばりに詮議してやろうか、それとも弁慶ばりに打ってくれようかと私の胸の裡だけが荒れていたのだが、帰省して年が明けると (more…)