ロードスターへ

ロードスターへ

整理をしていたら懐かしいカレンダーが出てきた。80年代をまだ引きずる1990年は1月から黄色い車が飛ばす——。

あの頃に夢中で読んだCALマガジン。「この車に乗れないなら、俺は電車に乗る」KMCのクォーザーを履いたソリッドカラーのピックアップに添えられていた言葉に、今も心は奪われたままだった。欧州車のポンコツっぷりに驚嘆しながらも、自身のルーツをもう一度 (more…)

弘前にて

弘前にて

角界一の巨漢力士、大露羅が今場所で引退——。故北の湖理事長の付け人にして忘れ形見である力士だから、理事長との逸話が多く、厳しい男社会の中で一際ハートフルな話は琴線に触れるものがあった。相撲界における師匠と弟子は親と子であり、育まれた絆はときに国籍はおろか血縁をもしのぐことがあるのかもしれない。引き寄せられたような出会いとは (more…)

山と川と山陰の古湯

山と川と山陰の古湯

大山(だいせん)は言わずと知れた西日本を代表する山で、中国地方最高峰の独立峰。出雲風土記に火神岳として登場するその古き神山は、西側からの姿を富士の名を付けて呼ばれるが、北側や南側に回ると一転して、むき出しの岩肌が屏風のようにそそり立つ。本州の温泉の多くは山深き東で力強く湧いているが、数で負けてもたおやかな西の温泉は古い歴史を持つ湯も多く (more…)

城の崎にて

城の崎にて

面倒な電話を聞き流しながら、右手でマウスを動かしていた。ネットニュースの報道にマウスのポインターが急停止すると、受話器は左手から力なく落ちていった。「寺門亜衣子アナ、結婚——」

まるで雪のような色白で、小柄だが元気いっぱい。時折見せる変顔がとてつもなく愛らしいNHKアナウンサーのお相手は (more…)

坂の上の湯煙

坂の上の湯煙

坂の上の雲が、それでもまだ頂きを隠すように覆っていた。

急坂を一気に駆け上がりアルプスの稜線に立つと、森林限界を越えた別世界がさらに強く鋭く、切り立ったままの荒涼で息を呑ませた。そして雲は燻らした煙のように白馬の山頂を漂い、高所の絶景は感動のそれより身震いを誘った。畏れるようにと (more…)